過熱する都心冷やそう 再開発でヒートアイランド深刻 湾岸部は「風の道」に期待

2024-08-18 HaiPress

品川駅、田町駅周辺。東京都は、再開発の折に「風の道」を確保するよう事業者に求めている=東京都港区で、本社ヘリ「あさづる」から

東京はおよそ100年前から、平均気温が3・4度上昇している。都市部を除く全国15地点平均を1・7度上回るのは、地球温暖化に加え、都市部の気温が周囲より高くなるヒートアイランド現象が進んでいるためだ。100年に1度という大規模な再開発が続き、さらなる影響が懸念される。東京を冷やすにはどうすればいいのか。(押川恵理子)

気象庁によると、7月の東京都心の平均気温は28・7度と平年を3度上回り、統計が残る過去150年間で、同月としては昨年と並び最高となった。

「このままでは近く、東京の夏の最高気温は40度を超える」と警鐘を鳴らすのは、気候学者で東京都立大名誉教授の三上岳彦さん。東京の都市環境や長期的な気候変動を研究してきた。

三上さんによると、気温上昇の要因の一つが、東京湾からの涼しい海風を遮る高層ビル群という。「定点観測では、汐留の高層ビル群の風下に位置する新橋地区は、ビル群がない所より気温が約1度高かった」

影響は埼玉まで及ぶという。東京湾からの海風は池袋・新宿・渋谷のビル群に阻まれ、その先にある「練馬や埼玉県川越市の辺りにはほぼ届かず、気温が上昇している」と指摘する。

都市の暑熱対策として、都は東京湾に近い品川駅・田町駅周辺で、高層ビル建設など再開発の折に、東京湾からの海風を遮らずに「風の道」を確保するよう事業者に求めている。

都が2020年に公表した指針では、地上50メートルで風速毎秒4メートル以上の海風の流れを「風の道」と設定。開発前の風速の50%以上を確保するため、できる限り新たな建物の高さを50メートル以下にしたり、建物と建物の間隔を空けたりするなどの対策を促している。事業者は開発前に気流シミュレーションを行い、風の道の確保策を都に示し、確認を得る必要がある。都の担当者は「風の道づくりは東京湾の海風を内陸部に取り込む重要な施策」と話す。

筑波大の日下博幸教授(気象学)は「一般的に海に近ければ効果は見込める。ただ海から離れるほど効果は弱まる」と指摘した。一方、三上さんは「仮に風の道をつくっても、内陸部になれば熱風が流れるだけだ」と懐疑的な見方を示した。

◆緑化で冷却効果も

ヒートアイランド現象の緩和には緑化が重要だ。樹木は、葉の表面で水分を蒸発する際、周りの熱を奪い気温上昇を抑える。

東京都立大名誉教授の三上岳彦さんらは明治神宮や新宿御苑の緑地などの地上気温を観測。緑地の冷たい空気が周辺の市街地に「にじみ出し」、気温を下げる効果を確認した。

三上さんらが「クールアイランド効果」と名付けた緑地の冷却効果。気象庁の観測地点の変更でも裏付けられた。2014年に「東京」の観測地点をビルの多い大手町から、約900メートル離れた緑の多い皇居外苑の北の丸公園に移した。すると年間平均気温は0.9度低下。夏の明け方には2度以上低い日もあった。

暑さ対策には街路樹も有効だ。三上さんらが新宿区で路面の表面温度を調べると、日光が直接当たる路面温度が約50度の時、木陰は約30度だった。ただ東京は世界の首都と比べて都心の緑地面積の割合が少ない。経済協力開発機構(OECD)が昨年発表したデータでは、東京の緑地比率は21.4%。加盟37カ国の平均46.3%の半分に満たない。

◆今月のポイント

・ヒートアイランド現象などの影響で、東京の平均気温は100年で3.4度上昇

・品川周辺の再開発では、東京湾からの涼しい海風を遮らないよう配慮

・緑化で気温上昇抑制を。東京の緑地比率はOECD加盟国平均の半分未満

<ヒートアイランド現象>都市化で気温が上昇する現象。ビルの空調や自動車など社会活動に伴う人工排熱が増えたり、アスファルトなどに覆われた地面が熱をため込んだりして、夜になっても気温が下がりにくくなる。夏場は熱中症リスクが高まるとされる。地図上で気温の等しい地点を結ぶと、都心部を中心に高温の地域が島のように見えるため「ヒートアイランド」(熱の島)と呼ぶ。一方、郊外に多い草地や森林は保水力が高く、水分の蒸発による熱の消費で気温の上昇を抑制できる。


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